今朝、病院の待合室にいたら面白い会話を耳にしました。私が、民主党関連の記事を読んでいるのを見て、あるご婦人が口火を切りました。
「民主党は、ヒラリーとサンダースのどっちが勝つのかしら?」
そこからは、もうピーチクパーチク。おおむね若い人はサンダース派、中年以降はヒラリー派。その数は半々ってところでした。
「あの女(ヒラリー)はさあ〜、大統領になるために虎視眈々と生きてきたわけじゃない。だけど、ソーリー、今回もダメだと思うわ」なんて意見も。こう言ったのは、小意地の悪そうな、わりかた美人の二十代。
ところで、みんなが「ヒラリー(あるいはサンダース)じゃ勝てない」と、たびたび口にしていたのですが、「勝てない」の相手は誰だと思いますか? はい、トランプなんですね。つまり、ヒラリー、あるいはサンダースに対する「共和党大統領候補=トランプ」という図式が、すでに待合室の人々の既成事実になっていたのです。街場の話はバカにできません。やっぱり、共和党はトランプが勝つんですかね?
かたや、「民主党大統領候補=ヒラリー」がこれまでの既定路線でした。が、ここにきてサンダースが猛烈に追い上げています。その様は、2008年の大統領選を連想させるとも。そう、当初先頭だったヒラリーが、新星オバマに負けた、あの大統領選です。ヒラリーの脳裏にはデジャブがよぎっているのでしょうか。
米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によれば、以下がふたりのポイントです。
(アイオワ州/2月1日予備選)
ヒラリー 51.0%
サンダース 38.3%(全米規模)
ヒラリー 46.8%
サンダース 42.8%
全米では、これまで20ポイント以上離れていたのですから、急速に差が縮まっているわけです。もしも、初戦アイオワでサンダースが勝ったら流れが完全に変わるかもしれません。
サンダースは、資金面でも追い上げています。昨年度最終四半期の寄付金総額は日本円にして約40億円。これは、ほぼヒラリーに匹敵します。ただし、異なるのはヒラリーには大口の寄付が多いのに対し、サンダースのそれはネットを通じた少額寄付が主流だということです。なんでも一回あたりの寄付平均は27ドル(3,000円くらい)とか。この点も、オバマ政権誕生時に似ていますね。
このため、先週開かれた第4回目民主党大統領候補討論会(1月17日/サウスカロナイナ州チャールストン)では、これまで比較的鷹揚に構えてきたヒラリーが闘志をむき出しにしました。
討論会は、マーティン・オマリー前メリーランド州知事(ハンサムです!)を含む3人で行われました。でも、主役はあくまでヒラリーとサンダース。サンダースは自称「民主的社会主義者」。彼の政策は、大不況時にルーズベルトが行ったニューディールに近いです。ふたりの違いをテーマごとに見てみましょう(以下、カッコ内は討論会での発言)。
【国民皆健康保険】
サンダースが、日本のような「全国一律の官営医療保険制度」の創設を訴えているのに対し、ヒラリーは現在の「オバマケア」を保ちつつよりベターにする方針です。日本から見るとちょっとわかりづらいのですが、「オバマケア」は国民皆保険といっても、実際にやりくりしているのは民間の保険会社です。
サンダースは、「他の先進国に出来ていることが、なぜアメリカで出来ないのか? 製薬会社や保険会社が、政治家に大金を寄付しているからだ」と、大企業と関係の深いヒラリーを暗に批判。ヒラリーは、サンダース案に対し「計画が雑。資金はどこから?」と反論。サンダースは、選挙戦では禁句の「増税」を明言しましたーー「税金は増えるが、医療費が下がるので、国民の懐は差し引きプラスになる」。
【ウォールストリート】
ヒラリーと金融界の関係は親密です。たとえばヒラリーは年間、円にして7,000万円の講演料をゴールドマンサックスから受け取っています。「私は、大銀行から献金は受けない。ゴールドマン・サックスから講演代も受け取らない。約束する。ウォールストリートの人間は、絶対に私の内閣には入れない」(サンダース)
【銃規制】
銃規制は、サンダースの弱みです(共和党なら強み(笑))。彼はバーモント州選出の上院議員ですが、バーモント州は銃容認派が強く、かつて銃規制に反対する投票を何度かしているのです。「現在の、全米ライフル協会の自分への評価はマイナスDと低い」(サンダース)と、やや苦しい答弁。
【ISIS】
「シリアでISISを撲滅する3つの計画を考案」(ヒラリー)。「シリアに、これ以上米軍を送り込むことはしない。中東に深入りすれば泥沼化するだけ」(サンダース)
【ビル・クリントン】
討論会の終了間際に、司会者から「ビル・クリントン元大統領の過去(セックススキャンダル)」について意見を問われたサンダースの返答=「確かに、彼の行為は嘆かわしいものだった。でも、もう済んだことじゃないか。私はこれまでこの件には触れなかったし、今後もそうだ。ビルのことじゃなく、この国のことを話し合おう!」。インスタグラムで、クリントンのセックススキャンダルを揶揄しているトランプとはえらい違いですね。
つまるところ、現実派のヒラリーか、改革派のサンダースか? 有権者は、そこを問われているようです。サンダースの支持率が伸びている背景には、日本同様、既成の政治家や政党に対する根深い不信があるような。