私にもわかる(かな)アメリカ大統領選#2016

アメリカ新大統領の誕生は2016年11月8日。在ロサンゼルスのノンポリが、渡米16年目にして初めて大統領選を追っかけます。大統領選、私にもわかるかしら?


5州で競う「スーパー・チューズデー」を占う

 今日は、コネチカットデラウエアメリーランドペンシルバニア、そしてロードアイランドと、計5州で予備選が行われる「スーパー・チューズデー」です。いったい「スーパー・チューズデー」って何度あるんでしょう? 次に何州もで選挙が重なるのは6月7日の日曜なので、これで最後の「スーパー・チューズデー」と思います。今日の5州はすべて東海岸、それも北部が多いです。この辺りは長距離列車、アムトラックが発達している地域なので、「アムトラック予備選」と呼ぶメディアもあるようです。

 

 【今日の予備選州と代議員数】

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 民主党ではヒラリー・クリントンが、共和党ではドナルド・トランプが優勢と予測されています。ヒラリーは、先週の〈ニューヨークの勝利〉で党の指名を得たに等しい状況になりました。今日の注目点は、どこまでサンダースを引き離し過半数に迫れるかでしょう。

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 だいぶん疲れが見え始めたヒラリーさん。声もガラガラで、白髪染めをしている暇もないみたいです。

 一方、共和党はもっと生っぽい戦いです。党の覚えがめでたくないトランプとしては、7月の党大会までになんとしても過半数の1,237代議員を獲得しなければなりません。したがって、今日ガボッと獲っておきたいところ。なお、2位と3位のテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)とジョン・ケーシック(オハイオ州知事)が、一部の地区で共闘を張ると報道されましたが、早くもその話はご破算になったようです。トランプの思うツボですね。

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速報③/〈ニューヨーク決戦〉のまとめと、今後のゆくえ

 ニューヨークは朝の4時を迎えました。予備選の開票率は94%です。100%を待っていると、私がいるロサンゼルスも朝になってしまうので、この段階で〈ニューヨーク決戦〉のまとめに入ります。

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 ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの大勝を伝えるCNNのウエブサイト。www.cnn.com

 

【開票率94%時点の各候補の得票率】

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 出口調査開始時点ではほぼ7割だったトランプの得票率が落ちて、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事が票を伸ばしました。この人もけっこう粘るね。テッド・クルーズは惨敗です。一方、民主党の2人はほぼ6:4。 

 

【民主党候補者の獲得代議員数】

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 ヒラリーサンダースの差がまた少し開きました。ニューヨーク州のカウント方法のせいか(各州で異なります)、得票率のわりにサンダースの獲得代議員数が多く、サンダース・ファンの私としてはホッ。ただし、数学的に考えれば、もはやサンダースの指名は不可能に近いです。代議員数の過半数は2,383。ヒラリーが、いつその数に達するのか? 徐々に興味はそちらに移っていくことでしょう(悲)。サンダース陣営の作戦は、各州での得票率を少しでも増やし、現在ヒラリーを推している「特別代議員」の気を変えさせること。しかし、これから戦う地区ではニューヨーク州同様、無党派に投票させない州が続くので、無党派層に支持基盤があるサンダースには不利な状況です。

 

【共和党候補者の獲得代議員数】     

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 代議員の過半数は1,237。夏の党大会までに、トランプがその数をゲットできるかが最大の注目点です。過半数を取れば、すんなりトランプが共和党から大統領候補に指名されます。そうでない場合は、共和党首脳部が党大会でトランプ以外の候補に〈一本化〉を計るようです。この動きをトランプは大いに批判していますが、「指名選びのプロセスは一年以上も前から決まっていたこと」(首脳部)。また、そもそもアメリカで、今日のように直接選挙に近い形になったのは1970年代からという事実もあります。

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3分でわかる! 中級者のためのバーニー・サンダースってどんな政治家?

yukikoyanagida.hatenablog.com

 (↑)では、バーニー・サンダースの略歴や政策を記しました。ここでは、民主党のライバル、ヒラリー・クリントンと比較しながら、サンダースをもう少し掘り下げてみます。

 

【寄付金平均27ドル(約3,000円)】

 サンダースヒラリーも、「中流の喪失」や「貧富の格差」に強い懸念を示している点は同様です。しかし、大きな違いはウォール街など大企業との関係。ヒラリーはこれらの企業と密接で、高額の講演料や寄付金を得ています。たとえば、ゴールドマン・サックスから受け取った〈1回〉の講演料は、日本円にして約2,450万円(UBS銀行やドイツ銀行の講演でも同額か、それ以上)。繰り返しますが〈1回〉です、〈1年〉ではありません。反対に、サンダースへの寄付金は1回あたり平均27ドル(約3,000円)。草の根募金が中心です。また、ヒラリーは1986年から6年間、何かと労使問題で騒がれるウォルマートの取締役もつとめました。

 ちなみに、ウォール街はサンダースを推しているとか。理由は、サンダースならヒラリーより共和党の大統領候補に負ける確率が高いから。つまりウォール街は、共和党政権の方がやりやすいのです。

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【健康保険】

 サンダースは、私企業が介在する国民皆保険制度(「オバマケア」)から、日本のように国が管理する制度への移行を目指しています。日本からはわかりにくいし、私も最近まで知らなかったのですが、低所得者や高齢者用のセイフティネット、「オバマケア」は、大手保険会社によって運営されているのです。「アメリカの医療費がちっとも安くならない諸悪の根元はここにある」と、サンダースは訴えます。

 しかし、サンダース流の国民皆保険を実施すると、1トリリィオン・ドル以上(数字が大きすぎて計算できず)を要するとか。そのため、サンダースはハッキリと「税金は上げる」と公言しています。選挙中に税増の話はタブーなのに、勇気がありますね。ただし、「保険、製薬、医療関連の私企業に、今のようなやりたい放題をさせないので医療費は激減する。したがって、家計はプラマイで得をする」と説明しています。

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【外交、戦争、テロ対策】

 サンダースは主張しますーー「2003年のイラク侵攻は、アメリカ史に残る愚行。その決議にヒラリーは賛成票を投じた」。当時、下院議員だったサンダースは、数少ない反対票を投じた議員のひとりです。これに対し、ヒラリーは再三再四謝罪しました。しかし返す刀で、元国務長官およびファーストレディの豊富な外交体験をアピール。サンダースの外交能力の未知数を指摘しています。

 サンダースIS対策はこうですーー「ISは倒す。しかし、ヒラリーがしたようにカダフィの追放を迫ったのでは、かえってISを刺激し過激な軍事行動を取らせてしまう」。ざっくり言って、戦争や戦闘に関してサンダースは慎重派、ヒラリーはやる時はやる攻撃派と言えそうです。

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速報②/〈ニューヨーク決戦〉はトランプとヒラリーで決まり

 いやいやいやいや、予想外に早い勝利宣言でした。共和党のドナルド・トランプと民主党のヒラリー・クリントントランプにいたっては、出口調査およそ5%の時点で勝利が決定。10%段階で早々に、自身が所有するマンハッタンの高層ビル、トランプ・タワーで勝利の演説を行いました。

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 祝勝会会場のトランプ・タワーを練り歩くトランプ。地元での勝利の味はまた格別でしょう。

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 出口調査1%時の結果。その後も数字はほぼ変わらず勝利宣言に。

 満悦のトランプは勝利宣言時、「I Love New York」と繰り返し叫びながらこんなことを語りました。

  1.  外国に仕事は出さず、アメリカ国内に雇用を戻す。
  2.  米軍は立て直し、以前のように最強の部隊を作る。
  3.  不法移民には出て行ってもらう。
  4. 「オバマケア」(オバマ大統領が主導した国民皆保険制度)は止める。
  5.  テッド・クルーズは、これで消えた。
  6.  私は、投票によって代議員を選ぶ予備選の手法が好きだ。(←夏の党大会で「トランプ外し」を目論む共和党首脳部への皮肉です。)
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3分でわかる! 初心者のためのバーニー・サンダースってどんな政治家?

 以前にも記しましたが(↓)、ここでもう一度、バーニー・サンダースの経歴や政治信条、人となりを紹介したいと思います。

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 この人がサンダース。スローガンは「Political Revolution(政治革命)」、「Enough is Enough(もうたくさんだ)!」「Feel the Burn(熱さを感じよ。名前のBarnieとBurnの掛詞)」。

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 立候補時ほぼ無名だったサンダースも、今は大ブレイク。ロサンゼルスの街には「Feel the Burn」をパロッたエイズ・ヘルスケア財団のビルボードまで出現。感染症になると焼けるように泌尿器系が痛む。「痛みを感じたらすぐに検査を」と呼びかけている。from LA Times

略歴】

  •  1941年/ニューヨーク、ブルックリン生まれ。両親はユダヤ系ポーランド移民。
  •  1964年/シカゴ大学政治学部卒後、バーモント州に住む。在学中に差別反対運動で逮捕される。大工、映画製作者、作家などの職業を経験。
  •  1981〜89年/バーモント州バーリントン市長。
  •  1991〜2007年/バーモント州より下院議員に選出。
  •  2007年/上院議員に。
  •  2015年/従来は、民主党と院内会派を組む無所属だったが、大統領選出馬に際し民主党に入党。
  •  自家用車は小型のシボレー。過去にレコードを出したこともあるが、「あれは最低だった」(本人)。妻子の他に孫もいる。

【 政策】 

 自称「民主的社会主義者」。極めてリベラル&革新的で公約は(↓)。

1)公立大学の授業料無料化。

2)全国の最低賃金を15ドルに。

3)死刑反対(ライバルのヒラリー・クリントンは賛成)。

4)病欠の有給化(含・家族ケア、長期療養)。

5)賃金の男女平等。

6)徹底的な政治資金規制。

7)不法移民の合法化(ドナルド・ランプの〈国境の壁〉には反対)。

8)徹底的な温暖化対策。

 (↑)に対し、民主党内保守で「中道」をいくヒラリーは、「口約束。もっと現実的な政策を」と批判。私個人としては、気持ちはわかるけれどサンダースは、「民主的社会主義者」と自称しない方が得策と感じています。なぜなら、たとえ頭に「民主的」と付けても、「社会主義」という単語に、絶対的拒否反応を示すアメリカ人がとても多いからです。 

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 「Rolling Stone」誌の表紙を飾ったサンダースヒラリー。接戦が続く。

 以下は、サンダースの政治信条について1カ月ほど前の「週刊文春」で言及した宮崎哲弥氏の文章要約です。

  サンダースはーー、

  • 社会主義者ではなく、歪んだ資本主義を修正しようとしている。
  • 5年で計1兆ドル(約110兆円)の公共投資を公約。1,300万人の雇用増を目指している。
  • これこそ「反緊縮財政」で、リベラル経済政策の真骨頂である。

  朝日新聞によれば、仏経済学者でベストセラー『21世紀の資本』著者のトマ・ピケティも、「ルモンド」紙上でサンダースを熱烈支持した由。

サンダース氏の勝利は阻まれてしまうかもしれない。だが近い将来、彼のような、でももっと若く、白人でもない候補者が大統領選で勝ち、国の『顔』をすっかり変えてしまう可能性があることが証明された」(朝日新聞2月24日朝刊の抄訳より) 

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速報①/大票田の「ニューヨーク決戦」、注目は民主党、ヒラリーvsサンダース

 久しぶりに「ワシントン・ポスト」紙の大統領レース・サイト(↓)を見たら、風景がグンと変わっていました。あんなにたくさんいた候補者が、スッキリと減って5人に。また、以前は単独トップだったドナルド・トランプ(共和党)に、ヒラリー・クリントン(民主党)がほぼ並ぶ形まで迫っています。

https://www.washingtonpost.com/graphics/politics/2016-election/presidential-candidates/

 今日は大票田(共和党95、民主党247代議員)のニューヨーク州決戦(予備選)です。すでに投票開始から6時間。新聞やTVは、共和党ではトランプの、民主党ではヒラリーの勝利を予測しています。ニューヨークは、トランプが生まれ育ち現在住む街であり、またヒラリーが2期上院議員に選出され(2001〜09年)、今在住している州でもあります。どうやら、共和党はトランプが断トツのようですが、民主党はそれなりの接戦になる模様。実はヒラリーの対抗馬、バーニー・サンダースも、この州(ブルックリン)で生まれ18歳まで育っているのです。

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(↑)は、マンハッタンのワシントン広場でのサンダース演説会。サンダース陣営は27,000万人の支持者が集ったと発表。サンダースは、他にコニーアイランドのボードウォークやブルックリンのプロスペクト・パークなどで集会。熱狂的ラリーが展開されました。Photo from BernieSanders.com。

 ただし、ニューヨーク州の民主党は、党に登録している者のみが投票できるシステム。サンダースの支持者に多い無党派はロックアウトです。また、党への登録は、サンダースがブレイクする以前の昨秋に締め切られているので、サンダースにとってはかなりの痛手です。そして、ここで大差で負けたりしたら、サンダースはほぼ息の根を止められるでしょう。

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候補者はマリファナをかく語りき

 今日は話題を少し変えて、各候補の「マリファナの合法化」に関する意見をまとめてみます。なんで急にマリファナ? と思われるかもしれません。が、これ、現在アメリカで、同性愛に次ぐ市民権的課題になっているんです。また、長年危険物として忌避されてきたマリファナに、実は医療的価値があるのではないかという研究が盛んに勧められています(念のために記すと、私自身はマリファナを体験したことがありません)。実際、23州とワシントンDCが、マリファナ医療目的の使用を合法化しています。さらに、この秋にはカリフォルニア州他数州で、嗜好目的マリファナの是非を問う住民投票が行われます(コロラド州他4州では、嗜好マリファナも合法)。マリファナは、大統領選がここまでの接戦にならなければ、もっと議論されていたテーマだったのです。

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