私にもわかる(かな)アメリカ大統領選#2016

アメリカ新大統領の誕生は2016年11月8日。在ロサンゼルスのノンポリが、渡米16年目にして初めて大統領選を追っかけます。大統領選、私にもわかるかしら?


共和党大会3日目:テッド・クルーズの奇襲とマイク・ペンスの副大統領候補指名受諾

 共和党大会、最終日の昨日、ドナルド・トランプが、党による大統領候補正式指名後、初めての演説を行いました。実は私、おととい徹夜で働いたため演説時には寝ていました。夜中にトイレに起きて家人に「どうだった?」と訊くと、「実に長かった」。今朝の新聞によれば、70分も話したようですね。これって〈最長記録〉だとか。トランプの演説を含む最終日の様子は後ほどお伝えします。

 ここでは、遅ればせながら3日目(テーマ=「Make America First Again」)の報告です。この日のポイントは2つ。

  1. 副大統領候補のマイク・ペンスの指名受諾演説。
  2. テッド・クルーズ、〈異例〉のトランプ支持拒否演説。

 テッド・クルーズ、やっちゃいました。誰もを「あっ!」と言わせた驚きの奇襲。さすがクセ者です。クルーズは、予備選で最後までトランプと大統領候補を争い、敗れた上院議員(共和党/テキサス州選出)です。また、この日までトランプ支持を表明していませんでした。その彼が党大会で登壇し、どうトランプを支持するかに注目が集まっていました。

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 クルーズの直前にビデオ出演したマルコ・ルビオ上院議員(共和党/フロリダ州選出)。彼も予備選でトランプに敗れたひとりで、トランプ嫌いで知られています。しかし、「戦いは終わった。今は団結の時だ」と、この日は大人の振る舞い。

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 ルビオに続いてクルーズ登場。クルーズは演説上手の誉れが高いです。でも、私個人は、ケレン味がありすぎるのでこの人の演説は嫌いです。しかしこの日のクルーズは、アメリカの歴史、建国の意義、それを踏まえた理想のアメリカ像など、見事な演説内容。私でさえ唸りました。もちろん会場はやんやの喝采で、誰もが彼がトランプに言及する瞬間を待っていました。

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  が! いつまで経っても、クルーズトランプを語ろうとしません。だんだん聴衆もなんか変かも、と気づき始めました。

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 しらけた表情のトランプ一家。次第に、会場からブーイングが始まり場内は騒然に。

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  騒然とする中、クルーズは最後までトランプ支持を表明しなかったばかりか、建国の理念=自由を掲げ、「自由意志で投票を!」と、あたかも「トランプに投票するな」と言わんばかりの発言で演説を終了。何万もの怒る人々を前に、平然と演説し続けたクルーズの根性と意志はたいしたもんだと思います。「この場でそれするか?」という当然の疑問はさておいて。

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 異変を感じ、急遽後方から会場入りしたトランプは、当初呆然とするもすぐに立ち直り、「俺は大丈夫だ」と手を挙げて聴衆に応える。

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 新聞によれば、クルーズと同様のことを、1964年の共和党大会ドナルド・レーガンがしたそうです。そして、それが2年後のカリフォルニア知事選の勝利へとレーガンを導いたといいます。クルーズは、きっと4年後の大統領選を考慮しての行動でしょう。

 では、マイク・ペンスの演説に移りましょう。 

      

 マイク・ペンスの副大統領指名受諾演説(↑)。ペンスはアメリカでも知名度が低く、私自身は初めて演説を聴きました。なかなかの演説巧者です。ご興味のある方はクリックしてみてください。ポール・ライアン下院議長の紹介に続き、ペンスが登場します。

 ペンスも他の政治家同様、民主党ヒラリー・クリントンを批判しましたが、それは単なる悪口ではなく、「借金のない小さな政府」「外交を間違えない強いアメリカ」(アメリカはイスラエルの側に付く、と強調)を訴える文脈からでした。また、インディアナ州知事であるペンスは、知事としての実績もきちんと自己紹介。その上で、トランプ礼賛と続けます。まず「トランプは、従来の共和党政治と違うかもしれない」と、反トランプ派を意識したコメントをした後に、「しかし、それは、彼が個性的で独立した個人である証拠」と、なかなか上手な展開でした。加えて、「トランプは人柄も素晴らしく、家族を何より大切にしている」とも。

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 その時、TVカメラがトランプ一家を映したのですが、誰が何番目の奥さんの子どもなのか?と考えて苦笑したのは、私だけではないでしょう。

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 ペンスの演説は、理詰めで雄弁、道徳的で責任感のある政治家という印象も見る者に植え付けました。この人なら暴走するトランプを止めてくれそう、と安心感を抱いた米国民も多いはず。その意味で、ペンスを副大統領に選んだトランプ(あるいは共和党主流派)の目論見は成功したといえるでしょう。

 そうそう、ペンスは「トランプが大統領になれば、国は大きく変わる」と語った時、「大きく」に、トランプの口癖である「huge」を使って、自分にユーモアがあることも抜かりなく表現しました。クルーズといいペンスといい、討論で鍛えられているだけあってアメリカの政治家は実に演説上手ですね。

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 副大統領候補、マイク・ペンスの演説の後で(↑)。

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