私にもわかる(かな)アメリカ大統領選#2016

アメリカ新大統領の誕生は2016年11月8日。在ロサンゼルスのノンポリが、渡米16年目にして初めて大統領選を追っかけます。大統領選、私にもわかるかしら?


まさしく〈舌戦〉、第6回目共和党大統領候補討論会(2016年1月14日/サウスカロナイナ州ノースチャールストン)

〈舌戦〉とはこういうことをいうのでしょう、第6回共和党大統領候補討論会。拍手喝采とブーイングが激しく交差したデベートでした。私が大統領選を追っかけるのは今年が初めてなのですが、いつもこんな感じなの? だとしたら、大統領選ってやっぱおもしろいわ。

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 前回の討論会から蘇ったクリス・クリスティ・ニュージャージー州知事。先週行われたオバマ大統領の一般教書を、「あの人の話を聞いていると、この世はバラ色、夢のよう」と非難。観衆のapplause(喝采)を浴びました。ちなみに、一般教書で大統領は、排他的発言を続けるトランプを暗に批判しましたが、直後にトランプは、「退屈で眠くなった」なるコメントを残しています。

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 司会者から「多々批判もあるようですが、イスラム教徒の入国に対する考えは?」と問われたトランプは、「一時的入国禁止という考えに変わりはない。私はアメリカの安全を望んでいる」。会場はapplause(パチパチ)。

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  ブーイングが起きたのは、トランプが「弱い人間はいらない」と言った時でした。標的はブッシュ弟。ブーイングは、ブッシュ・サイドからでしょう。そんな応援にもかかわらず、今回も影が薄かったブッシュ弟

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  トランプが、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)に対し、「アメリカ人ではないから大統領になれない」と、発言した際もブーイングの嵐が。トランプが、今まで放っておいたクルーズを非難したのには理由があります。2週間後に最初の予備選が開かれるアイオワ州の世論調査で、クルーズトランプを抜いたからです。クルーズの支持団体は、保守派の草の根運動団体「ティー・パーティ」や福音派キリスト教徒。

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  そのクルーズは1970年、カナダ、カルガリー生まれ。父親はキューバ人(当時は石油関連。後に牧師)、母親はアメリカ人です。ところで、米憲法では「アメリカ大統領になる条件」=「a natural born Citizen」と制定されています。「natural born」の解釈は幾通りかありますが、現在では一般に、「アメリカ人の父か母の間の子は、どの国で生まれても大統領になることができる」と考えられています。ただし、憲法が制定された大昔の解釈は「属地主義」=「アメリカ国内で生まれた者に限る」。この考えにしたがえば、クルーズは大統領になれません。実は、現在「属地主義」を好んで唱えるのは保守派なんですね。つまり皮肉なことに、クルーズ自身やその支持者たちなのです。が、この際は「そんなことには目をつぶっちゃえ」ってところでしょう。

 クルーズは、金脈疑惑もささやかれています。私個人は、なんだかこの人、匂うんです。議論上手と評価されていますが、逆にケレン味が滲み出ちゃってて信用できない感じ。

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 トランプの主張を、「ニューヨーカーの論理ですよ」と鼻で笑ったクルーズに、トランプは「ニューヨークは、テロの悲劇を乗り越えて立ち直った高潔な都市。君は偉大な街を侮辱している」と、昂然と反論。この時のトランプはいっそ凛々しく、クルーズ完敗。

 さて、applauseに戻りますとーー。

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  トランプは保護貿易主義者で、今回はハッキリと日本企業「コマツ」の名前を出しました。「中国元も日本円も安すぎる。だから、キャタピラーの機械を買いたくても、ついついコマ〜ツのを買ってしまうんだ」。会場=Applause(パチパチ)。

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「ISの脅威を理解していない」と、オバマを批判するマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出)。相当がんばっていましたが、現政府批判の中で、「我々の権利は政府によって与えられたのではない。神が与えたのだ」と言ったのにはドン引きでした。ただし、この発言、アメリカではノー問題です。アメリカは、まったきキリスト教国なのですね。

 共和党にはたくさんの候補者がいるので、討論会を異例の2部制にしています。第1部で支持率下位者同士の討論会、そして、第2部の人気上位者による討論会と続きます。まあ、マイナー・リーグとメジャー・リーグみたいなもんですね。今回マイナー落ちしたのが、カーリー・フィオリーナ前ヒューレッド・パッカードCEOとランド・ポール上院議員。ポール議員は、それを良しとせず欠席しましたが、フィオリーナはしぶとかった! 堂々と登場し、いつものようにどっさりとヒラリー批判。ここまでくるともう一種の〈芸〉です。

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「私とヒラリーの戦いを見たいでしょ? お金を払ってでも見たくありません?」(フィオリーナ)。うーん、払っちゃうかも。「女の戦い」の第一人者、橋田壽賀子先生あたりもチケットを買うかも。

  とまあ、こんな展開だった共和党の討論会。決してトランプが好きでない私にさえ、トランプの「首位動かず」がハッキリ見て取れました。他の候補者、しっかりしろ!(フィオリーナさんは充分しっかりしてるので、そのままでひとつ)。